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HOBIE SURFBOARDS JAPAN 代表
井上雅昭氏 インタビュー Vol.2
~オルタナティブボードの火付け役タイラー・ウォーレンと、オルタナティブボードヒストリー~

(Vol.1の続き)

タイラー・マジック

[Web Media AO, 以下AO] ではタイラー・ウォーレンのボードの特色を教えて頂いてもよろしいですか?特定のモデルでもいいんですけれども。

[HOBIE JAPAN 井上雅昭氏、以下HB] Tyler Wallen Shapesの特色と言いますとですね、タイラーは、ああいう感じでサーフィンもメチャメチャ上手くてアートも描くし、見た目もカッコ良いしでとにかく人気ですけれども、中学生とか若い頃からロングボードに触れ合ってるっていうのは、あの世代からなんですよね。

それより前の世代っていうのはやっぱりショートボードから始めてて、ロングボードがリバイバルになったっていうような、僕らの40代、50代とかってそういう感じなんですけど、それより上の人70歳くらいかな、の人は60年代のロングボードブームを知ってるんです。

けど、タイラーっていうのは最初からロングボードに触れ合ってる若い世代で、なおかつフィッシュ系のムーブメントとかオルタナティブ系のボードのムーブメントも、時代的にちょうど彼が20歳そこそこで経験したりしています。とにかく最新であり、古い歴史を良く知っていて、ダナポイント、ホビー・サーフボード、テリー・マーティン、ホビー・アルター、そういう所の人達とも、とことん話をして昔の事も良く知っていて、サーフボード自体もすごく詳しくて、そんなアーティストが作り出すモダンアートであり、機能的にも裏付けされた、歴史に裏付けされた物なんですね。

[HB] まず最初に出て来た物っていうのは、バー・オブ・ソープっていうミニシモンズだったり、ロングボードでいうとサリナスモデルっていうすごいノーズが四角いロングボードだったり、見た目で人をあっと言わせるんですよね。「なんか普通のと違うな」みたいな感じをみんな受けるんです。

けれども、乗るとやっぱりホビーイズムがものすごい叩き込まれていて、乗ると乗りやすいっていうのが彼のボードの人気の理由だと思うんですね。世の中に一見変わってるサーフボードとかデザインって沢山あるんですけど、機能的じゃない物が多いじゃないですか、そういうのって。

[AO] まぁ凝ったデザインだと乗りにくいのかなって思っちゃいますよね。

[HB] そうそう、実際そうですよね。サーフボードの形って、なんでそうなってるかっていうとやっぱり機能を考えてこういう形になってるんですよっていうのが基本だと思うんです。それを崩して形のカッコよさとかちょっと奇抜さを出すと乗りにくくなるじゃないですか。それが彼の作るものって、タイラー・マジックなんて呼んでますけど、 言ってみたら、どれも見た目と全然違うんですよね。

[AO] なるほど、そうなんですね。

[HB] そういったものを作る…もの凄い計算されてると思います。例えばですけど、コンケーブがすごく深い物とか作ってきた場合に、コンケーブが深いってことは、抵抗が大きいから走らない、進まないだろうと誰もが思うんだけど、乗るとそれがスイスイ走ってくれるっていう。なんでだろうって後から考えたら、コンケーブ、横方向にはすごく彫ってあるんだけども、縦方向には実はストレートだったみたいなのとかもあったりして、見た目と全然違います。凄く考えられているし緻密です。

DUCT TAPE 優勝とサリナスモデル

[AO] サリナスモデルとおっしゃったのはボード形状のカテゴリーはどのようなものになるんですか?

サリナスモデル
(photo by HOBIE SURFBOARDS)

[HB] 2011年、スペインのサリナスで開催された、DUCT TAPE INVITATIONALで、見事タイラー・ウォーレンが優勝をしました。その時の使用ボードをモデル化したものがサリナスモデルで、タイラー本人がシェイプをしています。ノーズ性能を非常に重視したネオクラッシックノーズライダーになります。ボードサイズ は9’6”×23″×3″です。

ノーズライダーながら、タイラーのスタイルをしっかりとサポートし、テールを踏み込めば、想像以上に動く、マジックボードです。ワイドノーズ、ワイドテールで、ノーズライディング性能は抜群です。レイルはタイラーの師匠であるテリー・マーティンから直伝の、テーパード50/50レイルです。

このレイルにより、波への食い込みが非常によく、よりノーズライド性能を引き出しています。最大の特徴は、ハングが非常にしやすい、ラウンドスクエアーノーズです。ノーズライド時のフットスタンスをサポートします。ノーズライディング性能とターン性能を兼ね備えたモデルになります。

[AO] ノーズライダーなんですね。

[HB] ノーズライダーなのでノーズも大きくて、テールも大きくて、今言った様にテールが大きくてコンケーブが深い物っていうのはノーズ性能が高いけれども走らないっていう感じするじゃないですか。テールが大きいからターンしにくいって感じがするのに、タイラーは、いろんな部分を、レイルの厚さとか含めて、ロッカーの度合いとか含めて、色々な調整をしてそういうのを打ち消しちゃうんですよね。

[AO] なるほど、別の要素でそれを補ったりして結果的には良い仕上がりになっているんですね。

[HB] そうなんですよ。別のファクター(要素)で補うんですよ。凄いんですよ、だから本当に。

オールラウンドサーファー、タイラー・ウォーレン

[AO] タイラー・ウォーレン・シェイプスもかなり今人気がある感じですね。

[HB] 凄い人気です。タイラー・ウォーレン自身がもちろんロングボードメチャメチャ上手いですし、ショートボードもメチャメチャ上手いし、ミッドレングスもどんなものでもとにかく上手く乗るんです。それがやっぱり人気の秘訣でもあるかもしれないですね。彼自身もショートボードからミッドレングスからロングボードからどんなものでも一人で削って、実際自分で乗って、テストをしてっていう風に作ってるんです。

本当のクラシックのロングボードから、ノーズライディング、がっつりしたハングテンから、ミッドレングスやショートボードも、もの凄いサーフィンをします。僕は、なんでもあれだけ乗りこなせる人っていうのは、彼が一番最初の人じゃないかなと思います。今若い子達、みんなそういう感じの子多いんですけど、彼が育ってくる過程で、周りはロングボードはロングボーダー、ショートボードはショートボーダーっていう感じで分かれてやってたような時代背景の中で、彼はなんでもやりこなした最初のパイオニアじゃないかなと思いますね。

[AO] なかなか、そんなに色々幅広くやるっていう人は少ない気がしますよね。

[HB] そうなんですよね。だいたいロングボードやってて、ミッドレングスやフィッシュ乗る人はトライフィンのスラスターのショートボード乗らない人多いですよね。逆にショートボードですごい上手い人はロングボードでパフォーマンスは出来てもノーズライディングがっつりっていうのは難しいと思うし。

タイラー・ウォーレン氏
(photo by HOBIE SURFBOARDS)

オルタナティブボードの火付け役

[AO] タイラー・ウォーレンはオルタナティブボードの火付け役とも言えるんでしょうか?

[HB] そうですね、時代背景から言うと、ロングボードからフィッシュ系のボードのムーブメントが出てきた頃、GLASS LOVE(グラスラブ)とかのサーフDVDとかLITMUS(リトマス)ていうサーフムービーとか、あの辺が出て来た頃。カリフォルニアでオルタナティブボードをFISHFRY(フィッシュフライ)とかが初めてやった頃とか、その頃の時代にちょうど彼が20代でぶつかったのかな。

20代前半かなぁ。その頃、それまでロングボード一辺倒だったのが、短いボードにその頃乗り始めたらしっくりきたんでしょうね。ワンカリフォルニアデイなんかでもそうですけども、ロングボードで培った柔らかいライン(航跡)をショートボードで描くっていうか、それがワンカリフォルニアデイのムービーの中ですごい注目されたんですよね。

[AO] 滑らかに弧を描きながら乗っていくっていう…。

[HB] そうですね。ショートボードってどうしてもパンピングしたり、スラッシュ的に急にターン、板返したりとかってしますよね。けれども、今までで一番売れたサーフィンのDVDムービーだと思いますけど、ワンカリフォルニアデイというムービーの中で、初めてタイラーが短いボードに乗るのを見た人が多いかもしれないですね。

もの凄いメローなショートボードに乗るんですよね。柔らかい気持ち良い感じの。そのオルタナティブサーフィン、サーフボードっていう物の、そういう雰囲気のボードなんですよ。短いけどトライフィンじゃない、いわゆる大会に出るショートボードじゃない、その辺のムーブメントの事をオルタナティブ系っていいますから、それにすごい合致したんでしょうね。

[AO] タイラーよりも以前からオルタナティブ系のシモンズとかフィッシュっていうのは存在したけれども、それらをいい形で乗ることを見せて、乗り味のいいオルタナティブ系のボードを沢山世に出されて、大きなムーブメントにさせたっていう事ですかね。

[HB] そうですね。火付け役っていう意味で言えば、アンドリュー・キッドマンにより手掛けられたリトマスっていう映画の中で、デレク・ハインドが昔のフィッシュを持ち出して乗ってる映像、それが最初だって言われてます。それを見たトム・カレンが「これは何だ?」って言って、自分で乗り始め、トム・カレンの自身のシグネチャーDVDの中で乗った辺りから、もう勃興してきたんですね。その頃フィッシュボードとか、もの凄いホビーともリバイバルして出して来ましたけれども、タイラーはそれに乗ってみたっていうことでしょうね。そしたらこんなに楽しかったという事だと思います。

[AO] 最初にオルタナティブに乗って見せたデレク・ハインドのオルタナティブの最初のボードっていうのはどなたが作られたボードだったんですか?

[HB] それはスキップ・フライですね。ただ、一部の人たちの物だったのがタイラーが乗り始めた頃からだんだん広まって来て、すごいムーブメントになった時にちょうどタイラーがいたんですよね。

[AO] その人気に火をつけたのがタイラー・ウォーレンだったんですね。

ハイドロダイナミカとバー・オブ・ソープ

[HB] 彼は、元々ホビーのテリー・マーティンが削るフィッシュに乗ってたんですけれども、シモンズの人気が出てくる時に、ハイドロダイナミカっていうプロジェクトでボブ・シモンズのボードを復刻させて、乗ってみようっていうプロジェクトがカリフォルニアでありました。ボブ・シモンズっていうのは1940年代の人ですから、 テリー・マーティンなんかがバルサの板で一時ツインフィンを作ってたんですね。長い10feetくらいの。

でもそれは一般的には乗りやすい物では無かったんですよね。重くて長くて四角くて、で、シングルフィンの柔らかいさっきのフィル・エドワーズモデルみたいなものが主流になっていって、そのボブ・シモンズのデザインは一回消え失せたんですけれども、それを引っ張り出して復刻させてみようっていうようなプロジェクトがあって、テリー・マーティンも一緒にやってたんですけれども。やっぱりバルサで10feet位あると、ああいう形のボードって乗りにくいんですよね。ターンも出来ないですよね。

[AO] 重そうですよね。

[HB] それを試験的にちょっと短くして、ちょっと短くして、どんどん短くしたらどうなるんだろうっていうようなプロジェクトだったんですね。そこで行きついたのが、4feet台前半~5feet台前半位まで、短くするとこれは機能するということが分かったんですね。

どんどん短くしたんですよね、10feetから。そういうムーブメントの中でタイラーがそれにインスパイアされて自身でも作ろうと作ったミニシモンズタイプのボードがバー・オブ・ソープ(BAR OF SOAP)というモデルなんです。タイミングが良かったのと、さっきのワンカリフォルニアデイで、タイラーのサーフィンを見た人からの人気と全てが相まって、バー・オブ・ソープはもの凄くヒットしました。タイラーが、初めて自分で削って世に出したのがこのバー・オブ・ソープだったんです。もの凄い人気でしたね。

バー・オブ・ソープ
(photo by HOBIE SURFBOARDS)

[HB] ロングボード以上のテール幅を有し、石鹸のような個性的な形状と短いレングスで、スピードと乗りやすさを両立している魔法のようなボードです。テイクオフもミニロングボードに匹敵する速さで、トロい波でもグングンと高速で進んで行きます。

ロングボードに近いラインで走れることも魅力で、多くのロングボーダーがセカンドボードとして使用し、ロングボードには乗りたくないショートボーダーが小波用に使用しました。

掘れすぎない日本の波には非常にマッチし、あらゆるコンディションで乗れる、とてつもなく乗りやすいボードだったことから、必然的にミニシモンズブームを巻き起こしました。現在もその人気は衰えを知りません。そのミニシモンズブームに、火をつけたのがこのバー・オブ・ソープなのです。

[AO] 今でもホビージャパンさんで、バー・オブ・ソープを販売されているんですか?

[HB] もちろん、販売しています。で、結果ミニシモンズといえばバー・オブ・ソープっていうぐらいまで、一般の認識になったと思いますよ。なのでそのオルタナティブ系の火付け役っていうような表現をされると思います。

[AO] 全メーカーのなかでも、ミニシモンズといえばバー・オブ・ソープでしょうと認識するまで人気になっていたんですね。フィッシュ系のボードでタイラー・ウォーレンのモデルもあるんですか?

驚異のフィッシュ、ドリーム・フィッシュ

[HB] はい、今言った様にホビーのフィッシュに乗ってて、自身でバー・オブ・ソープをホビーの中で出したんですね。ホビーのバー・オブ・ソープ、Tyler Wallen Shapesという事で。ホビーの中でフィッシュのシェイプは担当していなかったんですけれども、後で、彼も自分で削ったフィッシュに乗るようになりました。その彼のフィッシュのモデルはドリーム・フィッシュ(DREAM FISH)って言います。

ドリーム・フィッシュ
(photo by HOBIE SURFBOARDS)

[HB] 夢の魚と名付けられ、タイラーが爆発的なフィッシュブームの後発として、熟慮しつくし、機能性をとことん追求したフィッシュボードになります。全体的なアウトラインは滑らかな曲線が多様され、非常に優美な形状になっている中に、通常のサンディエゴフィッシュよりもシャープなアウトラインを採用し、パフォーマンス性能を向上させたデザインになっています。ノーズはラウンドポイントノーズ、レイルはミディアムレイル、もちろんテールはワイドなフィッシュテールです。ノーズロッカーはミドルで、テールロッカーはローになります。

このアウトラインや、ロッカー感、そして十分な面積を持つテールと、ボトムに備えられたシングルコンケーブにより、想像を超える加速を生み出します。またノーズ側のボトムにはロールが有り、水のエントリーを妨げない、非常に抵抗が少ないボトム形状になっています。

前出のシャープなアウトラインと、オリジナルのキールフィンと併せて、旋回性を向上させていて、ラディカルなターンやマニューバーが楽にこなせるようになっており、スピードと旋回性を併せ持つ、フィッシュモデルの中ではハイブリットな驚異的なパフォーマンスを持つフィッシュモデルです。

ドリーム・フィッシュとかオージー・フィッシュ(OG FISH)とか、フィッシュの種類はいくつかあるんですけれども、ドリーム・フィッシュっていうのが、普通の(ORIGINALの)いわゆるサンディエゴフィッシュをちょっとシャープにして、ちょっと掘れるところなんかでも機能するような感じにしたのがドリームフィッシュです。これがまぁバー・オブ・ソープの次にカルト的人気になっていきますね。

今言った様にフィッシュでは後発だったので、いわゆる一般のサンディエゴ・フィッシュなんかに結構乗った人が、ドリーム・フィッシュに乗ると、もの凄い機能するのですごく人気になったんですけれども。

[AO]ドリーム・フィッシュもHOBIE JAPANで取り扱われているんですか?

[HB]ドリーム・フィッシュも取り扱ってます、在庫もあります。ドリーム・フィッシュが先行してだったんですけど、その後からやっぱりサンディエゴ・フィッシュ、オリジナル的なものもモデルとして欲しいねっていう事で、周りからの声も多かったので、オリジナル(ORIGINAL)のフィッシュのモデルということで、オージーフィッシュ(OG FISH)っていうモデルも後から出してます。そちらの方がサンディエゴ・フィッシュにより近いものになりますね。

(Vol.3に続く)

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